ホームレスの男と小さな男の子が、夜のレストランに忍び込む。
怪しい風貌の男が見事な手さばきでオムライスをこしらえる…。
伊丹十三が撮った映画「タンポポ」のワンシーンだ。
映画は、宮本信子が演じる女亭主が切り盛りするラーメン屋を、
山崎努演じる運転手など、個性豊かな面々の協力によって
行列のできるお店に変えていく、というストーリー。
最初に書き出したシーンは、物語の筋からいうと重要ではない。
だがケチャップライスの上にのったオムレツにナイフをいれた途端、
半熟の黄色い卵がぷるんと流れ出すシーンが、深く脳裏に焼き付く。
この季節、道ばたに咲くタンポポを見かけるたびに、
ついオムライスを思い浮かべてしまう。
花より団子とはこのことだ。
〜〜2012.5 800 for eatsウェブサイト「800ごはん」立夏より〜〜