ソウルフード

宴では、よく自分の地元である山形の庄内地方の
郷土料理ってやつを振舞う。これが思いのほか喜ばれる。

知らない土地の知らない料理を食べるということは
みなさまにとっては、それ自体が新鮮な体験。
自分にとっては、地元の料理でもてなすことで
自分自身をプレゼンしているのかもしれない。

日々の食はその人を物語る。
幼い頃から食べてきたものってヤツは、
自分を形成する“ソウルフード”なんだってよく思う。
地元の食材を取り寄せて、郷土料理として振舞うことは、
そのまま自分を知ってもらうことに繋がっている。

それとは別の側面もある。
みうらじゅんじゃないけど、親孝行を考える年齢になった。
じつは、宴で郷土料理を作ること自体が
ひそかに親孝行(家族孝行)のシステムとして機能している。

母方の祖母はまだ現役で魚の行商を営んでいる。
郷土料理を作る時に、そのばあちゃんから魚を取り寄せるわけだ。
安く買えたり、心意気で貰えるときもある。
そういうメリットももちろん大きいけど、一番大事なのは
ばあちゃんの仕事を“利用する”ということだと思っている。
彼女が仕入れたり、さばいた魚を使うことで、
ばあちゃんの仕事ぶり、さらに言うならば生き様に
直接触れることができる。
そうすることで普段接している時より、
ずっと深く尊敬することができる。

さらにレシピを実家にいる母や祖母に聞く。
東京に出てきたドラ息子が、実家にコンタクトをとる
よいきっかけとなっている。

自分がなにげなく作っている郷土料理は、
自らの「土地のもの」「家のもの」を
受け継ぐことでもあるわけで、
それはプレゼントを贈るとか、そういうのとは違うけれど
実家を離れてしまった自分にできる、
ひとつの親孝行のカタチではないかと思う。

僕の中に宿るソウルはまだ完全なものではない。
というわけで、我が実家のみなさま。
これからもご指導ご鞭撻をよろしく。